「しまなみ海道には、まだまだ紹介したい場所があるんですよ。」大島を走り終えた帰り道、そう話してくれたローカルサイクリスト・倉瀨満帆さん。その言葉どおり、しまなみ海道の旅はまだ終わりません。橋を渡るたびに景色が変わり、島ごとに流れる空気も、人との出会いも、過ごす時間も少しずつ違う。それが、しまなみ海道の大きな魅力です。今回向かうのは、"神の島"と呼ばれる大三島。しまなみ海道のほぼ中央に位置するこの島には、雄大な橋の景色はもちろん、瀬戸内の穏やかな海、島ならではのグルメ、そして何千年もの歴史を受け継ぐ場所が点在しています。目的地を目指して走るより、気になった景色で自転車を降りてみる。潮風に誘われて寄り道をしてみる。そんな気ままなポタリングが、いつの間にか島の魅力を教えてくれるはず。さあ今回は、風を追いかけながら、大三島でしか出会えない景色を探しに出かけましょう。<大島編はこちら>https://iinaimabari.jp/kankou/QHug1yOG倉瀨満帆さん:今治の風と海を愛するローカルサイクリスト。お気に入りの寄り道スポットを、お散歩気分のゆるいポタリングで案内してくれます。自転車を降りたくなる寄り道がある海沿いをゆるやかに続く道を、自転車でのんびり走ります。潮風に背中を押されるようにペダルを踏んでいると、不思議と急ぐ気持ちはなくなっていきます。「この島は、寄り道がおもしろいんですよ。」そう話す倉瀨さんに案内されて最初に訪れたのは、島の柑橘を使ったコーディアルドリンクの店「果輪弥」です。迎えてくれたのは、大阪から移住してきた平松さん夫婦。いつか瀬戸内海のそばで暮らしたいという思いを胸に、2020年、コロナ禍をきっかけに大三島へ移り住みました。店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのは、棚いっぱいに並ぶ色とりどりのシロップの瓶。添加物を使わず、大三島で育った新鮮な柑橘を一つひとつ丁寧に仕込んだオリジナルシロップは、少しずつ種類を増やし、今では22種類にもなりました。まるで島の季節や香りが、そのまま瓶の中に詰め込まれているよう。「大三島産のレモンをベースに、ハーブや果物を組み合わせて、それぞれ違った表情の味に仕上げています。お気に入りの一本を見つけてもらえたらうれしいですね。」そう話すご夫婦の言葉からも、柑橘への愛情が伝わってきます。倉瀨さんが選んだのは、大三島産の「はれひめ」を使ったドリンク。このシロップはほとんど卸しておらず、味わえるのは、このお店ならではです。キンと冷えた一杯を口にすると、柑橘の爽やかな香りとやさしい甘みが、火照った身体にすっと染み渡る~。「あぁ、生き返る…。」倉瀨さんからも、しみじみと本音がこぼれました。ハーブに包まれる、島の庭へ「次は、とっておきの場所へ行きましょう。」ビタミンたっぷりのドリンクで元気をチャージした倉瀨さん。次に案内してくれたのは、「レインボーガーデン」。古民家のまわりに色とりどりの花やハーブが咲き誇る、小さな庭園のようなカフェです。迎えてくれたのは、店主の今宮晶子さん。2021年、なんとはるばる北海道から大三島へ移住してきました。北海道では自宅でハーブ教室を開いていたという今宮さん。移住先を探して各地を巡る中、この物件、そしてこの庭と出会います。「前のオーナーさんもハーブを育てていて、この庭を見た瞬間、『いいな』と思ったんです。」今では庭で育てたハーブを使ったスイーツやハーブティーを楽しめるカフェとして、多くの人を迎えています。古民家を改装した木のぬくもりに包まれた空間で腰を下ろすと、視線の先には緑豊かな庭が広がり、吹き抜ける風までどこかハーブの香りをまとっているよう。「ここは、ぜひ来てもらいたかった場所なんです。」そう話す倉瀨さんも、すっかりリラックスした様子。この時期におすすめだというルイボスティーと、ごまとミントのお団子をいただきます。ほんのり緑色のお団子を口に運ぶと、まず広がるのはごまの香ばしい風味。そのあとから、ミントの爽やかな香りがふわりと追いかけてきます。和菓子なのに驚くほど軽やかで、すっきりとした余韻を残す、夏にぴったりの味わいです。一緒にいただいたルイボスティーには、ハッカやラベンダーなど、庭で育てたハーブをブレンド。爽やかな香りが身体の中をすっと通り抜け、暑さで火照った身体までやさしくほぐしてくれました。庭を吹き抜ける風に耳を澄ませながら、お茶をゆっくり味わう時間。自転車で走る時間も心地いいけれど、こんなふうに自転車を降りて過ごす時間があるからこそ、島の旅はもっと豊かになるのかもしれません。島の空気を吸い込む再び自転車にまたがり、海沿いの道を進むと「多々羅しまなみ公園」が見えてきました。しまなみ海道を走るサイクリストにはおなじみの休憩スポットです。目の前に大きく架かるのは、白く美しい多々羅大橋。橋の向こうに見える生口島は、もう広島県です。島影を背景に眺める瀬戸内海は、まるで大きな湖のように穏やか。行き交う船も、ゆるやかに流れる潮も、この島ならではの時間の流れを感じさせてくれます。「大三島って、不思議と時間の流れがゆっくり感じられるんですよね。普段は時計ばかり気にしてしまうけれど、ここではそんなことを忘れてしまうというか……。」橋を眺めながら倉瀨さんがぽつり。確かにベンチに座って冷たい飲み物をひと口飲めば、「もう少し、この景色を眺めていたい」という気持ちが自然と勝ってしまいます。でも、お腹は正直です。「そろそろ、ご飯にしましょうか。」倉瀨さんのひと言に背中を押され、再びペダルを踏み出しました。島の風と一緒に味わうハンバーガーランチに向かったのは「NICE TOUCH BURGER」。海沿いの道に佇む人気のハンバーガーショップです。店主の松岡大介さんは、もともと東京で小学校の先生として働いていました。移住先に選んだのは、祖父母が暮らしていた大三島。いわゆる「孫ターン」で島へ戻り、祖母が農機具庫として使っていた倉庫を、自らの手でハンバーガーショップへと生まれ変わらせました。扉を開けると、店内には外国人サイクリストの姿も。倉庫だった頃の面影を残す床や梁、ラフなコンクリートの質感に、木のナチュラルさや遊び心のあるインテリアが溶け込み、どこか海外のロードサイドショップを思わせるポップな空間が広がっています。おすすめを尋ねると、悩んだ末に松岡さんがひと言。「写真映えなら、やっぱりチーズバーガーですね。」しばらくして運ばれてきたのは、チェダーチーズがたっぷりとかかった、迫力満点のハンバーガー。大きく口を開けないとかぶりつけないほどのボリュームです。思い切って頬ばると、香ばしく焼き上げられたパティから肉汁がじゅわっとあふれ出し、濃厚なチーズのコクが重なります。「実は、ここのポテトもおすすめなんですよ。」そう話す倉瀨さんに勧められてひと口。外はカリッ、中からおいしさがジュワッと出てくる。噛むたびにじゃがいもの甘みとうま味が広がり、ハンバーガーにも負けない存在感です。確かに、これは止まらない…。窓の外では、また一組のサイクリストが自転車を止めて店へ入ってきます。島の風を感じながら頬張るハンバーガーは、お腹を満たすだけでなく、「また走ろう」という気持ちまで満たしてくれる、大三島ならではのごちそうでした。とはいえ、お腹も心もかなり満足しましたね。そう倉瀨さんに声をかけると、笑いながら首を振ります。「まだまだですよ。今日紹介したのは、大三島のほんの入り口。大三島は、一日じゃ足りない島なんです。」その言葉どおり、この島には日本総鎮守と呼ばれる大山祇神社をはじめ、歴史ある建物やアート、絶景スポットなど、まだまだ訪ねたい場所がたくさんあります。興奮気味に話す倉瀨さん。確かにその言葉の意味は、この島を少し走っただけでもよく分かりました。さて、次回は"神の島"の中心へ。大山祇神社を訪ね、大三島に息づく歴史と物語に触れてみたいと思います。今回立ち寄ったスポット果輪弥住所:今治市上浦町瀬戸2633-14営業時間:金・土・日・祝日 10:00~17:00Instagram:https://www.instagram.com/karinya_seto/レインボーガーデン住所:今治市上浦町瀬戸4887営業時間:金・土・日・月曜 12:00〜17:00(L.O16:30)Instagram:https://www.instagram.com/rainbow_garden117/道の駅 多々羅しまなみ公園住所:今治市上浦町井口9180番地2営業時間:9:00~17:00(冬季 10:00~16:00)冬季定休日ありInstagram:https://www.instagram.com/shimanami_tatara/NICE TOUCH BURGER住所:今治市上浦町井口9183-9営業時間:11:00~15:00(不定休)Instagram:https://www.instagram.com/nice_touch_burger/※営業時間や営業日は変更となる場合があります。お出かけ前に各施設の最新情報をご確認ください。