ローカルサイクリスト・倉瀨満帆さんといくのんびりしまなみポタリングの旅。前編では、多々羅大橋の景色を眺め、おいしい寄り道を楽しみながら、大三島の入口を巡りました。後編は、もう少しゆっくりと島の時間に身を委ねてみます。<前編はこちら>https://iinaimabari.jp/kankou/Djzw38Rc多々羅大橋を眺めながら、ひんやりひと休み午後の日差しが少しずつ強くなってきたころ。「そろそろ、冷たいものが食べたくなりません?」倉瀬さんに案内されてやってきたのは、多々羅大橋を間近に望むアイスクリームショップ「ルポン・キャトリエム」です。サイクリストにうれしい「サイクルオアシス」でもあるこの場所。水の補給や簡単な自転車のメンテナンスもできる、頼れる休憩スポットです。カチャン、と自転車をラックに掛け、大きくひと息。「走ったあとにこういう場所があると、本当に助かりますよね。」倉瀨さんもホッとした表情で汗を拭います。店内に一歩足を踏み入れ、ガラスのショーケースを覗き込むと、思わず声を上げてしまうほど色鮮やかなアイスクリームがずらり。「これ全部、果実や素材そのものの天然の色なんですよ」そう笑顔で出迎えてくれたのは、店主のスーレ由美さん。「スーレ」さんというお名前、なかなか珍しいですよね。そう思って話を伺うと、海外暮らしが長く、フランスからの帰国後、自転車で移住先を探す旅の途中で大三島に移り住んだのだそう。前編で訪れた「果輪弥」のご夫婦は大阪から、「レインボーガーデン」の今宮さんは北海道から。そしてなんとフランス帰りのスーレさん……。お話を聞くたびに、この小さな島に人を引き寄せる何かがあるような気がしてきます。「自転車に乗って各地を訪ねたときに、瀬戸内海の景色に惚れ惚れとしてしまって。この景色の中で、おいしいものを届けたいと思ったんです。やっぱり体にいいものを食べてもらいたいじゃないですか。ここ、大三島は本当に食材の宝庫なんですよ。」店内に並ぶ完全無添加・ヴィーガンで作られたアイスクリームは、どれも大三島の柑橘や果物を中心に、瀬戸内の素材を使い、こだわりの製法で丁寧に作られたものばかり。その日の気分で選べる季節限定フレーバーも大人気です。今回選んだのは、パッと目を引く鮮やかな「すもも」と「甘夏」。ビタミンカラーが、エネルギーいっぱいの倉瀬さんにお似合いです。ひと口食べると、果実そのものをぎゅっと頬張ったような濃厚な甘酸っぱさが口いっぱいに広がります。それでいて後味は驚くほど軽やかで、火照った身体がすーっと冷やされていく…。幸せをかみしめながら多々羅大橋をぼんやり眺めていると、時間までゆっくり溶けていくようでした。神の島で、深呼吸する大三島まで来たなら、やはり外せない場所があります。全国に一万社余りもある山祇神社・三島神社の総本社、「大山祇神社」です。一歩、参道へ足を踏み入れると、それまでの海辺の風景とは空気が一変。木漏れ日が揺れ、葉擦れの音が響き、足元では石畳を踏む音だけが静かに続いていきます。「なんだか、急に空気がピンと澄みましたね……。」倉瀬さんも思わず声をひそめます。境内でひときわ存在感を放つのは、樹齢約2600年といわれる御神木。見上げるほど大きな幹は、長い年月をこの島で見守ってきた証のようです。サイクリングで高まっていた気持ちも、不思議と静かになっていく。神の島と呼ばれる理由が、少しだけ分かった気がしました。参道で味わう、一杯の余韻神社をあとにして参道をいくと、ふわりとコーヒーの香ばしい香りが漂ってきます。吸い寄せられるように足を止めたのは、「Pusai Coffee Roastery」。古民家を改装したコーヒースタンドです。出迎えてくれたのは、店主の手塚さん夫妻。妻の実希さんは北海道で約9年間カフェを営み、2025年にご夫婦でこの大三島へ移住してきました。「初めて訪れたとき、瀬戸内海の多島美に一目ぼれしたんです。」北海道の海とはまったく違う穏やかな景色と島の空気に惹かれ、この場所への移住を決めました。それにしても、またもやはるばる北海道からの移住組!驚いて詳しくお話を伺うと、なんと前編で訪れた「レインボーガーデン」の今宮さんとは北海道時代からの知り合いなのだとか。遠く離れた北の大地からの素敵なご縁が、ここ大三島に繋がっているとは、驚きです。一杯ずつ丁寧に淹れられた自家焙煎のスペシャルティコーヒー。実希さん手作りの米粉のカヌレや焼き菓子など、グルテンフリーや白砂糖不使用にこだわったスイーツも人気で、この日も地元のお客さんが買い求めていました。それにしても旅先で飲むコーヒーは、どうしてこんなにおいしいのでしょう。いつもとは違う場所で、少しゆっくりと味わうからでしょうか。手塚さんたちと何気ない会話を交わしながら参道を眺めていると、ここで暮らす人たちの日常が少しだけ垣間見えたような気がしました。「持って帰りたい」のは、島の空気でした旅の最後は、お土産探しへ。訪れたのは、大山祇神社の参道口近くにある「ミヤウラ商店」です。元薬局だった建物をリノベーションしたこの場所は、単なるお土産屋さんというよりも、島の人と訪れた人が自然と交わる交流拠点。店を営むのは、地域おこし協力隊を経て移住した大橋さん夫妻です。店内の棚には、瀬戸内の柑橘を使ったジャムや調味料、素朴で温かみのある器、丁寧に作られた雑貨やお菓子などがセンスよく並べられています。「瀬戸内のいいものを、僕たちなりの目線で選んでいます。」ふと店の奥に目をやると、誰でも自由に座れるベンチスペースと、なんとコインランドリーまで!「観光で来た人だけじゃなく、地元の人も洗濯がてら喋りに来られるような場所にしたかったんです。」洗濯物を待ちながら本を読んでいる方、ピアノをひいている方。なんだか、島の日常に溶け込んだ温かい空気に満ちています。あ、そうだ。お土産選びをしているところでした。どれもこれも素敵なアイテムばかり…。手にとったお土産を前に悩んでいると「全国発送もできますよ」と声を掛けてもらいます。荷物を気にせず買い物ができるのも、自転車旅にはうれしいポイントです。帰るころには夕方、港へ向かう道すがらふと海を見ると、瀬戸内海がゆっくりと濃い茜色へ染まり始めていました。昼間の鮮やかな青とはまったく違う、なめらかで静かな表情です。波音だけが静かに響く海辺。山々のシルエットの向こうへ、ゆっくりと沈んでいく太陽。その一瞬の美しさを捉えようと、足を止めてただ夕日を見つめる人たち。「やっぱり大三島って、ビューンと走り抜けるだけじゃもったいないですよね。」隣で夕日を浴びながら、倉瀨さんがぽつりとこぼします。「景色も、人との出会いも、お店も。一つひとつ自転車を降りて楽しみたくなる。だから、何度来ても新しい発見があるんです。」次に大三島を訪れるときも、きっとまた、気になる景色を見つけては自転車を降りてしまうのでしょう。そんな予感を抱きながら、私たちはゆっくりと帰り道を行くのでした。今回立ち寄ったスポットルポン・キャトリエム住所:今治市上浦町井口7074−16 B1営業時間:10:00~17:00 水曜・木曜定休公式サイト:https://www.instagram.com/lepont4e_icecream/大山祇神社住所:今治市大三島町宮浦3327公式サイト:https://oomishimagu.jp/Pusai Coffee Roastery住所:今治市大三島町宮浦5629営業時間:11:00~16:00(不定休)Instagram:https://www.instagram.com/pusai_coffee_roastery/ミヤウラ商店住所:今治市大三島町宮浦5714-3営業時間:10:00~18:00 火曜定休Instagram:https://www.instagram.com/miyaurashoten.omishima/※営業時間や営業日は変更となる場合があります。お出かけ前に各施設の最新情報をご確認ください。